株式会社真映社■動画を駆使しアナログ印刷の魅力と文化を伝える
印刷に不可欠な版を作っている株式会社真映社。ホームページでは動画でアナログ印刷を紹介し、顧客の裾野を広げている。その独自の事業を展開している角田京子社長に話を伺った。
一般客がアクセスしやすく価格を公開
活版印刷に伴う金属版や樹脂凸版などの版の製作を中心に、印刷材料の販売やワークショップなどを開催しているのが株式会社真映社である。2020 年 8月に角田純一社長が退任し、ご息女の角田京子氏が社長に就任。妹様の角田明子氏と二人で力を合わせて経営に携わっている。女性経営者の細やかな配慮が息づくホームページをはじめ、オープンイノベーションな明るい社風で活版印刷の需要喚起に励んでいる。
そもそも角田社長は5年間 NHK山形放送局に勤めた後、東京に戻って東京の NHKに勤務し夕方の情報番組のレポーターの仕事を3 年ほど務めた経歴の持ち主である。
「2015 年辺りから父親の会社の仕事を手伝う形で、ワークショップの仕事を行い、翌16年になってホームページ(以後、HP)を全面的に改良し、一般の人たちにも発注しやすいものに刷新しました」と、自らHPを制作し料金をオープンにしたのである。ただ、ワークショップに関しては、コロナ禍ということで1年半近く休止しており、再開が待たれるところである。
HP では取り扱っている版の種類と単価(1㎠の価格)を全て表示している。注文できる最小面積は100㎠で、代表的な樹脂版であれば「名刺の版ですと、一律 1,200 円で作ります。印刷は外注に出しています。個人のお客様ご自身で印刷したい場合は、弊社の小さな活版印刷機を使っていただくことも可能です」とのことで、材料費と制作時間から考えると、かなり安価に設定している。銅版と亜鉛版の版作りに関しては、株式会社 学術写真製版所(GC東京)に外注しているとのことだ。
顧客は個人から法人までさまざまで、「売上に関してはもちろん法人のお客様のほうが多いですが、受注件数は両者同じくらいでしょうか。個人ではデザイナーの方から活版に興味を持っていただいた一般の方、またワークショップに来られた方など多彩です。また、ラベル・シール印刷をされている印刷会社さんは、まだ樹脂版を使って印刷しているケースが多いようです。中にはネガを納品している印刷会社さんもいます」と、同社への発注はまちまちである。
組合員とは動画制作でコラボを
ところで近年、グラフィック社の『デザインのひきだし37』や学研プラスの『大人の科学マガジン』に同社の印刷方法が大々的に取り上げられた。「若い人たちはこのようなアナログ印刷が、逆に新しいと思ってくれる人が多いようです。印刷を娯楽として感じているのかなと思っています。1枚1枚がオリジナルで、アナログならではの手作りの温もりに魅力を感じているのではないでしょうか」。ゼロから版を作り印刷したことで愛着が持てるという点は、デジタル印刷では味わえないメリットと言えるだろう。
また特筆すべきことは、動画を制作し HP内にアップし、同時にYouTubeでも観られるようにしたことである。「動画にしてPRしたほうが、皆さんに関心を持ってもらえて面白いのではないかと思ったわけです」。
NHKで映像制作の現場にいた経験から、動画には訴求力があることは既に知っていた感がある角田社長。HPを閲覧すると、さまざまな角度から動画撮影し紹介している。樹脂版の作り方から小さな活版印刷を使っての印刷の仕方、活字ケースの作り方、樹脂版印刷の方法など、動画コンテンツは実に多彩だ。動画で分かりやすい版作りや印刷の仕組みを伝えて、アナログ印刷への関心を高める努力をしている。
動画を見るとHPの滞在時間は当然長くなり、その分活版印刷の面白さを感じてもらえて、受注に繋がる可能性が高くなるというわけだ。
GCJの組合員に向けてアピールされたいことがあればと水を向けると、「動画ですと結構見ていただけて、また理解してもらいやすいですから、一緒に動画を制作してネット上で拡散していければと思っています。印刷のことをもっと世間の皆さんに知っていただけるよう働きかけたいですね」と、動画制作のコラボレーションを促した。
今後の方向については、「活版印刷のことで最初に相談を受ける会社にしていければと考えています。それとアナログの良さ、楽しさを通じて活版印刷の文化を伝えていければと思っています。祖父の代から続けてきた印刷業ですから、できるだけ長く続けていきたいです」と将来の抱負を語った。
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