東京平版株式会社■技術向上に努めて最高品質のサービスを提供する
東京平版株式会社は1939年に創業し、美しい印刷物を作り続けるために製版技術の向上に注力してきた。「顧客に最高品質のサービスを提供する」ことを経営理念に、企画・デザイン・DTP、製版、印刷、販促展開・スキャニング等と、さまざまなサービスを展開している。
コンテンツプロバイダーとしてデジタル制作も
佐々木幸太社長率いる東京平版株式会社は、美しい印刷物を作り続けるために、印刷工程の全てをプロデュースする「トータル・プリンティング・マネジメント」を掲げ、顧客に最高品質のサービスを提供している。そんな経営理念の下で、プロフェッショナルとしての製版・印刷の知識と技術を追求し、顧客の要望に沿った高品質の印刷で“東京平版クオリティ”の確立に努めている。
「当社の売上の約6割は印刷会社さんからの製版関連の仕事になりますが、印刷産業は縮小傾向にあるため、将来的には印刷会社の下請けの仕事ばかりをしているわけにはいきません。前工程のデザイン分野を強化しなければならないと考え、20年程前に制作部門を立ち上げて、新しい仕事は企画・デザインから受注して、印刷までなるべく一貫生産で請け負うことに舵を切りました」と、デザイン部を設置した背景を語る。同時にCTPによる高精細印刷も開始した。
同社はカラー印刷を主体に、さまざまな業種の顧客から直請けすることに注力しているが、得意先の1つに大学をはじめとする学校がある。学報など各種定期刊行物はもちろん、端物、販促物、Web制作、電子書籍など印刷以外でも企画・提案を行い受注している。「これからはコンテンツプロバイダーとして、印刷以外のデジタルメディアでも企画・提案ができる印刷会社でないと生き残っていくのは難しいでしょう。当社ではお客様に最適な制作物を提供するために、印刷物だけでなく、Web上のコンテンツ制作、ドローン撮影など新しい分野にも積極的に取り組んでいます」と、メディアコンテンツ部を中心に、アナログとデジタルを融合したメディアを制作し、総合的にものづくりができる企業を目指している。
網点をコントロールし技術を物理的側面から向上させる
「コロナが収束しても印刷産業が縮小していく中で、もっと存在価値を高めていく必要があります。あくまでもクオリティの高い印刷物を作ることが当社の経営方針であり、それをもっと強化していかなければならないと考えています」と、クオリティの追求には余念がない。
「いま取り組んでいるのが、標準で280線を安定して印刷することです。単に280線で印刷するのであれば比較的簡単ですが、天候の変化や通し数が多い場合、綺麗な網点を再現するためには網点をコントロールすることが重要になります。当社ではマイクロスコープで網点を拡大し形状を確認し、網点のズレ・変動具合の原因を明らかにし、データを積み上げて検証し改善しています。単に見た目で判断するのではなく、網点を掌握しないと質の高い美しい印刷物は望めません」と、製版・印刷技術を理論と物理的側面からアプローチし、美しい印刷物を安定した運用で製品化しているとのことだ。
そこで高品質の印刷を安定して提供するに当たって、各部署のリーダーからプロジェクトメンバーを集め、技術推進委員会を設けて印刷物とその元になるCTP刷版を比較し、CTP刷版を印刷物側に綺麗に再現するための研究を日々続けている。前述の網点の掌握とコントロールをはじめ、用紙に合わせた写真データの色味の調整や被写体の立体感を表現する方法も研究し、業務に活かしている。
同社は2019年12月に、印刷本紙校正用インクジェットプリンタ「Proof Jet F780 MARKⅡ」から「Proof Jet F1100AQ」に機種変更してさまざまな用紙でテストを行い、用紙の色域再現性に応じたプロファイルを作成した。昨年3月から印刷本紙によるインクジェット校正出力サービスを開始している。
安定した色校正を出力するためには、温度・湿度管理が重要とのことで、同機のある部屋は徹底した室温管理を行っている。なお、同機は「ジャパンカラープルーフ運用認証」を取得しており、プライベート見学会も要望があれば随時開催している。
また、いま特に力を入れているのが美術関連の仕事である。もともと百貨店などで開催される美術展の図録の製作に多く携わってきた。今後は若手の作家やアーティストの活動に協力していきながら、彼らとのネットワークを築き上げ、新しいサービスを開発しながら次の時代の市場を創り出したいと考えている。
「神楽坂」を地域の人々と盛り上げて地域貢献を
また同社では、歴史と文化の街である神楽坂を地域の人々と共に盛り上げている。「地域に根ざして地元の人々と経済活動を一緒に進めていく中で、さまざまなメディア制作を受注し地域と良好な関係を築いていくべきだと考えています」。
その一環として、地元神楽坂で秋に開催される街の大文化祭「神楽坂まち飛びフェスタ」に協賛し、パンフレットの印刷やメインイベント「坂にお絵描き」で使用する全長700mのロール紙の提供も行っている。また、「神楽坂の街の景色を年賀状にするサービスも毎年実施しており、地域の人々に大変喜ばれています」とのことだ。
さらに先頃、「Artworks工房」を立ち上げ、手書き作品をスキャニングし1冊にまとめてオリジナル作品集を制作するサービスを開始した。このように一般客からも受注し事業の裾野を広げている。
佐々木社長は「結局、自社の得意なフィールドで力を付けて、存在価値を高めて印刷業界内で差別化していかなければならないと考えています」と、方向性を示し、製版を主体に技術力の向上に邁進しているところだ。
|