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概要

月刊GCJ 2016年9月号

日本におけるプロユースのデジタルカメラの歴史は20年ほどになる。この間、デジタルカメラは高画質化、低価格化、多機能化が進んできた。そんなデジタルカメラの技術の進化を見届けながら、仕事で活用してきたのがプロカメラマンの鹿野宏さんである。1997年、早川廣行氏が発足した「電塾」に早々と参加し、デジタルカメラの技術向上と普及に注力してきた。2000年には既に仕事でデジタルフォト100%を実現した。近年は、静止画撮影だけでなく、リアル5000万画素の超高精細撮影から短時間の動画撮影、美術品撮影、素材撮影等と、仕事の幅を広げている。そんな鹿野さんに最近の仕事や活動について、静止画と動画の関係、デジタルカメラのビジネスの考え方などについて話を伺った。161  S H I K A N O H I R O S H I  鹿野 宏タイムラプスや超高精細撮影でオリジナルの作品も撮る 去年、銀座のソニーイメージギャラリーで個展(作品展)を開催されましたが……。鹿野 個展のお話をいただきましたので、それに合わせて撮影したものを出展しました。最近は動画も撮っていますので、動画を取り入れた作品にしようと、タイムラプス(微速度撮影)の技術を用いて、大サイズの超高精細写真と4Kディスプレイで、静止画と動画を融合させた動画を作ることにしました。「Landscape」(風景)と「Stilllife」(スティルライフ)を組み合わせて、「Still×Scapes」というテーマで、風景と静止画の世界の境目に視点を置いた作品にしました。 タイムラプスとはどういうものなのでしょうか?鹿野 長時間撮影したものを短時間に圧縮して見せるもので、英語で「time lapse」(時間の経過)と言います。通常は速度の速い動画となり、場合によってはコミカルに見えるため作品にしづらいSHIKANO HIROSHI1956年福島県生まれ。武蔵野美術大学専科実技専修課を卒業後、写真館に勤務。カメラマンを目指す。1983年フリーランスとして開業。1991年有限会社ハンディを設立、練馬にスタジオを移転。1997年早川廣行氏に師事し「電塾」に参加。同年デジタルフォトを開始。2008年株式会社Labを設立し代表取締役社長に就く。2010年動画撮影・編集を開始。現在、電塾事務局長。自社スタジオを基盤に、物撮り・ファッション・美術品の撮影、また大型展示物制作・オペラの舞台用背景動画まで、写真・動画をオールマイティにこなす。と思っていましたが、表現するに当たって、通常の動画撮影では不可能な長時間露光で作り上げることで、ゆっくりと見せることが可能となり、非常に写真表現に近い動画に仕上げることができました。山や岩のように動かない風景に対して、太陽や月の光が画面に表情を与え、長時間露光によって波や雲が流れていく様を表現しています。このタイムラプスによる撮影表現は今後も続けていきたいと考えています。 そうですか。ところで、超高精細画像の撮影が行える、ハッセルブラッド『H4D Ⅱ200MS』というカメラをお待ちですが、どのような撮影ができるのでしょうか?鹿野 このカメラは日本に数台しかなく、マルチショットという機能で、1ピクセルに本来のRGB情報全てを持った5,000万画素の高品質で精密なデータを生成できます。さらに被写体をタイリング撮影という技術を用いて撮影し、4億~40億というとてつもない画素数のデータを生成することができます。もう1つMulti6ショットで撮影しますと、2億画素データを取得でき、元々が真性に近い正確なデータですから、拡大しても画像の劣化はほとんどありません。当「ミニマム動画」も撮影する多才なカメラマン  2016 September 6